おきなわ図鑑
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沖縄の海の生き物たち
Vol.4 沖縄 コブシメの季節
前回、沖縄の冬の風物詩という事でザトウクジラの記事を書いたが、もう一つ、冬ならではの生物がある。
コブシメだ。
コブシメ コブシメはコウイカ目コウイカ科のイカで、沖縄の方言であるクブシミが語源となっている。

紀伊半島以南の南西日本を含むインド・西太平洋のサンゴ礁周辺に分布し、外套長50cm、体重10kgになる。

沖縄では郷土料理のイカ墨汁を始め、刺身、天ぷら、チャンプルー、燻製など多くの食材として利用されており、県民にとってはなくてはならない存在だ。
コブシメの交接 コブシメは冬の時期に交接や産卵を行うため浅場にたくさんの個体が集まってくる。

コブシメの交接はオスとメスが向かい合い、腕を絡ませながら行う。
オスが交接腕と呼ばれる腕を使って、メスに精莢(せいきょう)と呼ばれる精子の入ったカプセルを渡し、受精に至る。 この間、約5分程度。

この交接シーンは情熱的で、ガイドとしては是非見せたいところであるが、なかなか見る機会はない。
コブシメの産卵 交接が終わると産卵をする。
コブシメは一夫一妻で、先ほど交接をしたオスが見張り役で立ち会う。

産卵場所は枝サンゴの枝間。 メスが卵を1つ1つ丁寧に産み付けていく。
ちなみに、オスとメスの見分け方は外套の模様で、縞模様がオス、水玉模様がメスになる。 写真の場合、奥がオスで手前がメス。

産卵は2日から3日かけて行われ、メスは1回の産卵で200個程度の卵を産み、シーズン中に数回の産卵を繰り返す。
コブシメ 産卵中に別のオスがやってきた。 すると、オスの様子が一変。体を白黒のゼブラ模様に変えた。

メスを獲得していないオスは産卵中のメスにさえ交接を迫ってくる。
メスに寄り添っていたオスは自分のパートナーを奪われないように、相手との間に自分の体をねじ込み、激しく抵抗する。

体色を変えたのは威嚇のためだ。
コブシメのバトル コブシメの攻撃は体当たりという地味なものだが、本人たちは至って真剣。

腕を大きく広げ、相手より自分の方が大きいぞと誇示している。

体を白黒の模様に変えるのは、イカの嫌いなゼブラウツボに似せているという説があるが真相は定かではない。
コブシメの卵 コブシメの卵はピンポン玉よりも少し小さく3cm程度。

産んだ直後は真っ白で中の様子を見る事はできないが、徐々に半透明になり、次第に中のコブシメの姿が見えるようになってくる。

そして、70日後にはハッチアウトの瞬間を迎える。
コブシメとウミウシ 産まれたばかりのコブシメはサンゴの枝間に隠れる。 海藻やソフトコーラルなど、ゆらゆらしたものにも好んで身を寄せる。

ある時、シンデレラウミウシに寄り添うコブシメの赤ん坊を見た事がある。
ウミウシの二次鰓を海藻と勘違いしたのだろうか。
何とも微笑ましい光景だった。

沖縄でのコブシメの観察時期は1月中旬から5月頃までで、ピークは3月から4月になる。