毎年、12月中頃から3月末にかけてオホーツク海やベーリング海などから多くのクジラが沖縄の近海に集まってくる。
その殆どが体長16m、体重30tに達するザトウクジラだ。(南半球のものはもっと大きい)
彼らは沖縄の暖かい海に出産、繁殖、子育ての為にやってくる。
この時期はホエールウオッチングツアーも行われていて、多くの観光客で賑わう。
ここでザトウクジラの行動パターンを紹介する。
クジラは肺呼吸の為、水面に上がって呼吸をする。その時、大きな飛沫が吹き上がる。
これをブローという。いわゆるクジラの潮吹きだ。
ブロー間隔は数分の場合もあれば、数十分の場合もある。
ブローの後、水中に潜る時に見せる行動はフルークと呼ばれる。
浅い潜りの場合は、写真のように尾ビレの上面を見せながら潜る。これをフルークダウンダイブと言う。 深く潜る際は、尾ビレを垂直に立て、内側を見せる。こちらはフルークアップダイブという。
浅く潜った場合、次のブローまでの間隔は数分程度だが、深く潜った場合、次に水面に浮いてくるのは10分以上かかる事もある。
ザトウクジラは非常に長い胸ビレを持つ。体長の1/3と言われているので、大きいものは 5mになる。
体を横にしたり、お腹を上にしたりして胸ビレを水面に出し、それを叩きつける行動を見せる。 これをペックスラップと呼ぶ。
遊びとか仲間とのコミュニケーションの為とも言われている。
尾ビレを持ち上げて、それを水面に叩き付ける行動はテイルスラップと呼ばれる。
水面を叩く際に非常に大きな音が出る。
周囲に対する威嚇行動だと言われている。
1度だけではなく、何十回と繰り返し行う事もある。
更に尾ビレを高く持ち上げ、反対側に振り下ろす行動はペダンクルスラップと呼ばれる。ザトウクジラのオスがメスを争ってメイティングを行っている時に良く見る気がする。
周囲のオスに対しての威嚇行動ではないかと思う。
ザトウクジラの行動の中で最も見る機会が少ないのがスパイホップだ。
頭部を垂直に持ち上げ、数秒間周囲を観察するようにしてから静かに水中に戻る。 時にはくるりと180度回転する事もある。 まさに偵察行動だ。
ザトウクジラは陸上の地形なども確認して自分の位置を把握している事が伺える。
頭部を垂直に高く出し、顎の部分から水面に激しく叩き付ける行動はヘッドスラップと言う。
勢いがあるので口や鼻から海水を噴き出す事もある。
メスを争っている時の他のオスへの威嚇行動ではないかと言われている。
クジラのパフォーマンスの中で最もダイナミックで人気があるのがブリーチング。
勢いよくジャンプして、体の2/3以上を水面に出し、体を回転させながら着水する。 大きな音と水飛沫が上がる迫力があるパフォーマンスだ。
体に着いたフジツボを落とす為とか、コミュニケーションの為とか、天敵のシャチを追い払う為とか、いろんな説があるが、ただ単に遊んでいるだけという説もある。
母と子のザトウクジラが一緒にブリーチングをしているシーンに遭遇したことがある。
母クジラが飛ぶと、子クジラが真似をするといった具合で、合計で50回以上のブリーチングをやっていた。 母クジラが子クジラにブリーチングのやり方を教えているように見えた。
ブリーチングはほんの一瞬の出来事だが、頭が出てから着水するまで2秒間は飛んでいる。 落ち着いてカメラを構えれば写真に収めるのもそれほど難しくはない。
ザトウクジラは歌を歌う事が知られている。
歌うのは繁殖期のオスだけで、メスを誘うためだと言われている。
歌には決まったフレーズがあり、それを何回も繰り返す。
同じ地域に回遊するザトウクジラのオスは皆同じフレーズを奏でる。
この歌は年ごとに流行があり、毎年少しずつフレーズが変わっている。
写真はザトウクジラの母と子。
沖縄ではこの母クジラと子クジラのペアを見るケースが一番多い。 子クジラが息継ぎが苦手な為、深く潜れないというのも理由の一つだ。
ザトウクジラの妊娠期間は11~12ヶ月。 産まれたばかりの子クジラは体長が4.6m、体重は1.3tある。